第8章 実録、あの世ライフ
気が付くと陽が傾きかけていた。
「そろそろ戻りましょう。いつあの出歯亀が覗きに来るかわかりゃしない」
さりげなく私の手を取り歩き出す鬼灯様。
私の体はまだ火照っていて
どっか飛んでっちゃいそうなくらい
どきどきして、おへそのまわりがキュンとしていた。
「どこ行ってたの二人とも?僕の槐ちゃんに手を出したら赦さないよ!」
「いつから貴方のなんですかこの色魔」
「女の子は皆僕の物であって欲しいのー!」
白澤様は良くも悪くもいつでも素直だ。
でも、鬼灯様はどうなんだろう?
今だって、さっきあんなに猛烈にキスしたのにそれを気取られないような素振り。
まぁ、白澤様や桃太郎さんには知られたくないよね
それは私もちょっとそうかも。
「で、出来ましたか?」
「うん、まぁ間に合わせの材料で作った割にはいいと思う」
「何を注文していたんですか?」
「槐さん、よくぞ聞いてくれました。この薬は貴方の為にこしらえたのです」
「・・・作ったのは僕なんだけど」
「これは、瘴気に対する抵抗を劇的に軽くする薬です。つまり貴方がこれを飲めば、楽に地獄を歩き回ることが出来るようになります」
「地獄にも、人間基準で素敵な場所はあるんです。折角なんでそれも体験していただこうと思いまして。まぁただ薬なので、あまり依存しないようにしないといけませんが」
「ハイハイ、じゃーお代貰うよ。そんですぐ帰れ!桃タロー君豆!豆撒いて!」
「お代、本当は私がお支払するべきでは・・・?」
「そうだよね!じゃあ槐ちゃんに体で支払ってもら
「経費で落とせるので私がお支払いします。それとも、私の体で支払って差し上げましょうか?あァ?」
「気持ち悪いなぁ・・・ハイハイ、ちゃんと受け取りました帰れ帰れ」
白澤様にお代を渡し、
すれ違い様に鬼灯様が小さく呟いた言葉に
私の心臓の鼓動がまた跳ね上がった。
「今夜、地獄の門で待っております。薬、忘れないでくださいね」