第6章 錆びた扉の桃源郷 ※R15くらい
「・・・つまりの所、彼女があの世にいる理由がまだ判らないのです。」
今までのあらましを大まかに白澤様に説明しながら、鬼灯様はお茶をすする
桃太郎さんが入れてくれたお茶は、ほんのりと甘い。
「正直な話、私は白澤さんに槐さんを預けるのは気が進みません。しかし、さっきの事も踏まえると、妖の類にも精通している白澤さんの所が最適かと。」
「不安な事といえば、・・・女癖の悪さっスよね」
「うるさいなぁ」
「桃太郎さん、頼みましたよ.。一応、私もちょくちょく顔を出しに来ます。貴方自身の調査も勿論ですが、現世についてのあれこれも聞いておきたい事がありますし。」
「はいはい、じゃあお前はもう帰れ帰れ!」
シッシッと手を振り、追い出そうとする白澤様
争う姿勢を見せずに素直に立ち上がる鬼灯様
「では槐さん、外までお見送りをお願いします」
手を引かれ、一緒に外へ出る。
「あの、鬼灯様、本当にありがとうございます。何から何まで」
「・・・私は、貴方を助けた時点で全てを知っていました。
にも関わらずその場で伝えるどころか何一つ救う事が出来ずにいます。恐い思いばかりさせてしまって・・・
独りの辛さは、人並みに理解しているつもりです。今は色々ありすぎて混乱していると思います。もしも、辛くなったら思い出して下さい」
そう言うと、ゆっくりと私を抱きしめる鬼灯様
胸に顔をうずめるようにしてそっと目を閉じてみる。
そうか、あの時涙を拭ってくれたのは、私が独りきりになる事を知って案じてくれていたんだ・・・
私を抱きしめる力が強くなる。もっと温もりを感じていたくて、私は体重を預けた。