第2章 勧誘
「私の両親は偉大な科学者であり、思想家でした。二人は空気中から無尽蔵に電力エネルギーを生み出す仕組みを発明し、雷の国だけではなく周りの小さな国や貧しい国に広めました。
この仕組みを活用すれば、人々の生活は今よりずっと豊かになり、いずれは国同士の争いも無くなると両親は本気で信じていたのです。
しかしとある小国の忍達によって発電機の理論は巨大な兵器に転用され、他でもなく私達家族の住む雷の国へその矛先が向けられました。
幸い雲隠れの忍たちによって兵器は使われる前に国ごと滅ぼされましたが……それでめでたしめでたしとはなるはずもなく。
私の両親は捕まり、絞首刑となりました。
反逆罪だそうですよ。
見返りを求めるでも無く、ただ世界の為、平和の為と働いていたのに。利用され責任を押し付けられ……」
拳を握り締め、アオイは唸るように怒りを吐き出した。
「私は……戦うことにしか能が無い、忍という存在が大嫌いなんですよ」
短い沈黙の後、相変わらず無表情な男はくつくつと静かに笑った。
「両親を殺した雲隠れだけでは無く、忍という存在自体が復讐の対象とは面白い。俺もそこの二人も忍だぞ、復讐しなくていいのか?」
「……ええ、私だって命は惜しいですからね」
男の発言が冗談なのかどうなのか、アオイにはわからなかった。
「忍世界の全てを相手取るにはまだ時間が必要ではないか?それまで暁に籍を置くのはお前にとっても悪くない話だろう」
名を問われ、改めて名乗る。
「アオイ、か。身に余るその野望、叶える為に暁を使え。俺も俺自身の理想の為にお前のその力、使わせてもらうぞ」
こうして柳アオイは晴れて犯罪組織 暁の一員となった。