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私立ウィスタリア学院~新米教師とイケメン教師たち

第6章 担当教官の数学の先生


そこからジルによって語られたのは
学院設立から現在に至るまでの
この学院の悩みであった。

「この学校は紳士たる人間を
育成する目的で設立されたことは
あなたも知る通りです。

ゼノ理事長を初めとする
設立メンバーの中には
私も含まれていたのですが、

当初その目的は
うまく果たされているように
思えました。

しかし数年たってあることに
気付いたのです。

女性がいないがゆえに、
女性に対するマナーや礼儀が
実体験として学ぶ機会に乏しい、と。」

ジルはさらに話を続ける。

「私たちは話し合った結果、
将来的な共学を視野に、
まず女性教員を採用することにしたのです。

しかしいくら採用しても
半年も続かず辞めていってしまうのが
現実でした。

今日あなたが体験したいわば
男性教師によるからかいに
耐えられない者、
またそのからかいを真に受けて
いわゆる逆ハーレム状態に
溺れてしまう者、

大まかにはこの二種類でした。

前者は自ら辞めてゆき、
後者はこちらから
解雇を言い渡しました。」

「…解雇…?」
アヤセは少し驚いたように
言葉を繰り返した。

「はい。
ここは教育の場です。
それがエスカレートして
生徒にまで手を出されては
困りますからね…。

もう女性教員を採用するのは
無理かもしれない…
半ば諦めかけたときに
履歴書を提出してきたのが
あなたでした。

あなたはそのときの
採用条件を覚えていますか?」

(あ…)

アヤセはそれをよく覚えていた。

「…はい。」

「おっしゃってみてください。」

「男性社会科教諭1名…です…。」

「そのとおりです。
そう提示しているにも関わらず
女性であるあなたはたくましくも
履歴書を送ってきたのです。

この時点で私はなかなか
骨のある女性だな、と思ったのですが、
面接でさらに
あなたの聡明さや志の高さに触れ、
この女性なら
諦めかけていた共学の目標も
夢ではない、と感じました。

しかし当初、ゼノ理事長は
あなたの採用に反対でした。」

「え…そうだったんですか…?」

「はい。
でもそれはあなたの資質が
学院に相応しくない、
という理由ではなく、

また女性に
悲しい想いをさせてしまうのではないか、
という理事長の暖かな気持ちからでした。」
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