第6章 担当教官の数学の先生
「私もそれについては
大いに迷いました。
でもきっとこれは
私たちに最後に与えられた
大きなチャンスかもしれない
と判断し、採用に至ったのです。
ですから、
あなたは今朝のことや
今私にされたことぐらいで
戸惑ってしまってはいけないのです。
どうかうまくかわして、
上手に受け流すぐらいに
なってください。
そして我が学院の女性教師の
先駆けとして
輝きを放って欲しいのです。」
「…そんな想いで
理事長やジル先生がいたなんて…
驚きました…
…でも私にそんなすごいことが
勤まるのでしょうか…?」
不安げなアヤセの様子を見て
ジルは微笑みを顔に浮かべると、
「今朝、紹介式の前に
大きく深呼吸をしていましたね?
きっととても同様していた
にもかかわらず、
あなたは自ら気持ちを
切り替えているのだ、
と見受けました。
その様子はあなたの芯の強さを
見ているようでしたよ。
また朝のホームルームの際に、
生徒からかけられた
冷やかしの言葉にも、
あなたは動じることなく
受け止めていましたよね。
ゆっくりでいいのです。
自信を持ってください。」
と、アヤセを励ました。
「そ、そんなところまで
見ていてくださっていたんですか…?」
アヤセは少し恥ずかしくなり
顔を赤く染める。
「はい。
私はあなたの担当教官ですからね。」
その言葉にアヤセは
胸が暖かくなるのを感じた。
「…ありがとうございます。
不安な気持ちはまだまだありますが、
期待に沿えるようがんばります…!」
ジルはその言葉にニッコリと微笑んだ。
「そういえば先程はすいませんでした。」
(え…あ…さっきのアレのことだよね…)
少し顔を赤らめてアヤセは尋ねる。
「あ、あの…
もしかしてさっきのは
私に今のことを教えるために
わざとしたんですか…?」
ジルはアヤセの質問に
少し目を見開くも、
フッと微笑み告げる。
「はい、その通りです。
…………途中までは。」