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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


「遊艷楼に関わる全ての人が幸せになる方法を
僕と櫻井は考えています」

「全ての…」

「藍姫が…智が望む事ですから
なんとしても叶えてあげたい
僕はそう思っています
勿論、櫻井も同じ気持ちです」


智、か…
今まで誰にも話さなかったであろう、心の内を
この松本という男に話したのは
信頼しているからというだけではなさそうだ

智は、この男の事を…


「…確かに、いつまでもこの楼を続けて行く訳には行かないと思っています
ですが、此処のオーナーは自分ではなく、自分を育ててくれた養父母です
お恥ずかしい話ですが、まだまだ借金も残っている
簡単に此処を畳む訳には行きません」


養父母には育ててもらった恩がある
道端に倒れていた智を屋敷に連れ帰った時も
智を側に置きたいと願った俺の思いを汲んでくれた
恩を仇で返す訳には行かないんだ


「その事は藍姫もわかっています
どうでしょう、松岡さん
借金は誰の分が幾ら、となっていると思いますが
そうではなく、総額で見てはもらえませんか。
そして全ての借金を返し終えた後
この楼を閉鎖することを約束して欲しいんです
これは藍姫が望んだことです」


松本さんの話は続く


「皆で幸せになる為に、皆で借金を返す
そして完済した後には此処を児童養護施設として再出発する
僕がNPO法人を立ち上げます
未戸籍の魅陰達に戸籍を作り、就学させる
どうでしょうか?」

「私は、施設として運営していくに当たり必要な改装の資金を用意します
その代わり、約束して欲しいんです
今、部屋子として働いている者が十四を迎えても
本人が望まない限り魅陰にはしない事。
新しく見習いを取らない事。」


その他にも、幾つか条件を提示してきた
それを飲めば、借金完済後の楼の行く末は保証されるという事か

俺と雅紀は経営だけでなく
義務教育の年齢である者には楼内で学業の面倒を見、
お付き人である光一は本人の意思を確認した上で身の振り方を決めさせてはどうかという事だった

楼の行く末が大きく変わろうとしている。
決断の時だった


「一度、楼全体で話し合ってみてください
その時に藍姫達の気持ちを再確認するのも良いと思いますよ
正しい決断をお願いします」


二人は丁寧に頭を下げ
部屋を後にした



正しい決断、か…

ついさっきまで薄曇りだった空に
陽が射し始めていた
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