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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


「櫻井様、奏月が不安気な顔をしておりますよ?」

「あぁ…ごめん、
二度目に和也に会いに来た日な、
実は朝イチで藍姫の所に行ったんだ」

「藍姫様の所に…」


やはり
あの時の水揚げしたばかりの僕では満たされなかったということなのか、


「櫻井様に、奏月の好きなものを聞かれたのです
ですから、月が好きだとお教えして差し上げたのですよ」


あぁ…だからあの日、月の見えるホールをご予約されたのですね…


「へぇ。そんなことを…
奏月。心配は要らないよ?
普段の翔君は絶対にそんなことしないからね?
君だからそうしたかったんだよ
そうでしょ? 翔君」

「まぁ…そんなとこだ」


恥ずかし気に頭を掻く翔様を見れば
ふと掠めた不安な思いなど
あっと言う間に掻き消されて。


「ねぇ、皆さん?
僕の存在、忘れてない?」


背の高い松本様の後ろに隠れてお姿の見えなかった琥珀様が
ヒョイと顔を出した


「君が琥珀かい?」

「はい! はじめまして、櫻井様!」




御膳が運び込まれ
翔様の隣りには僕が
向かいに、松本様、藍姫様、琥珀様と並ぶ


「改めて礼を言うよ
この度は俺達の為に力を貸してくれて…本当にありがとう」


翔様が深々と頭を下げるから
僕も続けて深く頭を垂れた


「そんな、やめてよ!
僕達はただ、二人に幸せになってもらいたいだけなんだから」

「琥珀様…」

「琥珀の言う通りですよ」


お二人の優しさに涙が滲む


「何、何? 力を貸すって?」


事情を知らない松本様にこれまでの経緯を全て話すと
納得したかのように大きく頷かれた


「そっか…だから藍姫は喜多川の事を知りたがったんだね?」

「僕も情報を掴んだのですが、松本様も何か知っていらっしゃるのですか?」


琥珀様が身を乗り出して松本様をじっと見つめる


「藍姫にも伝えたんだけど、喜多川グループに脱税の噂があるんだ」

「脱税…」

「僕も! 僕も、脱税の噂をお客人から聞いたんだ
詳しくは教えてもらえなかったけど…」

「そうか
…イケるかもしれないな」

「翔様、イケる、とは…?」

「シッポ掴んで国税局に密告するんだ」

「国税局?」

「脱税を取り締まる機関だよ」

「翔君、俺の勘が正しければ
そのシッポ、意外と簡単に掴めるかもよ…?」


松本様の言葉に
僕達は思わず息を飲んだ
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