第1章 かりそめの遊艶楼
下へ下へと降りて
熱く反り立った翔様の中心を
舌で舐め上げる
「はぁっ…」
上目遣いに口へと運び、吸い上げるようにすれば
無意識に伸ばされたそのお手が優しく僕の頭を包み込んだ
「かずっ…!和也!
も、いいからっ…!」
「…ダメでしたでしょうか」
「違っ…!
良すぎて保たないから…」
余裕の無いお顔と
溢れる蜜
「和也が欲しい
一つになろう?」
コクリと頷き
翔様の上に跨がる
「無理するなよ?」
ゆっくり
少しずつ
二人が一つに重なった
「はぁっ…ぁぁ…」
「和…」
「愛してる…」
「愛しております…」
同時に、二人の声も重なった
ひとしきり愛し合い
求め合い
いつものように湯に浸かり、月を愛で
居間の壁に凭れて
目を伏せたまま寄り添った
「幸せに御座います…」
「あぁ…俺も幸せだ」
小指と小指を絡め
小さな格子窓から吹き込む夜風を感じると
ここが楼である事さえも忘れてしまう
「奏月様。宴会の用意が整いました
運び入れてもよろしいでしょうか」
襖の向こうから慧の声がするも
身体はそのままに。
「お入りなさい」
「失礼致します」
襖を開けた慧が
寄り添う僕達の姿を見て
頬を染めて微笑んだ
冷酒と烏龍茶
刺身と貝の盛り合わせ、枝豆、小鉢、揚げ出し豆腐
「和也、夕飯は?」
「まだに御座います」
「藍姫と琥珀も?」
「まだお済みでないかと、」
「じゃあ…慧くん、すまないが太夫達の分の夕飯も運んできてもらっていいかい?」
不意に櫻井様から名前を呼ばれた慧が
ビクリと身体を震わせ
「しょっ、承知致しました!
只今お持ち致します!」
慌てて部屋を出て行った
「奏月様。
皆様をお連れ致しました」
流石にこのままの姿でお出迎えするには失礼に当たる
襟を正し、正座をすると
何故か翔様も同じ様に隣りで正座をした
「どうぞお入りください」
スッと襖が開くと同時に
三ツ指を突いて頭を垂れた
「翔君、なんで正座…」
松本様がククッと声にして笑う
「いや…なんとなく?」
「櫻井様。お久しぶりに御座います」
「元気そうだな、藍姫」
「お陰様で」
「その節は色々と世話になった。
改めて礼を言うよ」
その節は…?