第1章 かりそめの遊艶楼
❦ 櫻井Side ❦
3日の時間を経て、和也に会いに来た
今日なら時間が空きそうだと連絡を寄越した潤と一緒に…
「着いてすぐ藍姫の指名、和也見て松の間にまっしぐら…忙しい潤さんだよ」
「ふふ…相当お会いになりたかったのですね」
「だろうな…」
今頃、語り合ったり愛し合ったり…
会えなかった分の穴埋めをしてんのかな
そんなことを考えていると
「…翔様、お話がございます」
急に真面目な顔をした和也がぽそりと言う
何?って問いかけると躊躇っているような間がしばらく続いた
そして、意を決したように話が始まる
「……身請けの話を…知っておられたのですね…」
その切り出しに
あれ…なんで知ってんだろと思いながらも首を縦に振った
「私はずっと、あの方から身請けのお話を…
そのことをどうしても翔様にお伝えすることができませんでした
でも知ってしまわれたと…琥珀様から…」
申し訳なさそうな表情をする和也
…そうか琥珀か
ちゃんと会ったことはないけどあの現場を見られてたんだ
「申し訳ございません…なんと申し上げたらいいのか分からなくて…
私の心は翔様に、翔様のお心は私にあるのに
嫌だと言える身ではない私達は、客人がそうしたいと言えばそうするしかない…運命…で」
「……和也…」
言葉を詰まらせ、下を向く和也の手を握った
「悪い…俺が早く…
その男よりも早く和也を身請けできるようにするから」
なんとかするから…
「……翔様…」
「時間は…掛かるかもしれないけど…」
「翔様」
「…ん?」
「…私共の考えを…お聞き願えますか?」
「私共…?」
それから真剣な顔をした和也に
藍姫と琥珀があの男…喜多川という男に向け考えている計画の話を聞いた
金をなんとかしなければ
そればっかり考えていた俺には、思い付かなかったことだった
「ご協力いただけませんか…?」
恐る恐る聞く和也に
「もちろん、協力する
それで和也が守れるんなら…いくらでも俺を使ってくれっ!」
と言うと嬉しそうに顔を輝かせていた
喜ぶ和也の頭を愛しく撫で、唇に触れるだけの口付けを落とす
「…俺も嬉しい…守るから
絶対、俺の嫁に迎え入れるから」
言いながら、左手の薬指を擦ると
和也は誰よりも綺麗に笑った