• テキストサイズ

びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


「……お久しぶりで…ございます」

「うん、ごめんね
来るとか言っておきながら…忙しくて」

「いえ」


うまくできているのか分からなかったけれど
笑顔を作ってポツポツと会話をしていく


潤様は今、大学や家のことで大変だと
私は楼内の変化が目まぐるしいと話した

お伝えできる部分だけ選び口にしていると
櫻井様から既に聞いてはいたらしい、和也の太夫の話になった


「今日、翔くんと一緒に来たから見たんだけど…本当に昇格したんだね」


とても驚いたという表情をして
でも嬉しそうに緩ませて…


まだ、お話をしていたいが
この流れに乗せて潤様にもお聞きしなければ…


「あの…潤様…喜多川様をご存じでいらっしゃいますか?」

「…あー喜多川グループの?」

「はい
その…喜多川様の何か、情報を…」


甦ってくる責任という言葉
話がそれより先に進められなかった


「…情報って…なんの?
周りで密かに回ってる噂のこと?」

「…噂?」

「色んな人が回してるから本当のとこは分からないけど
喜多川グループは脱税してるって…噂」

「脱…税…」


初めて、まともに聞けた情報


「なんか喜多川グループ全体で…」

「あ、も、もう良いです、充分でございます」


さらさらと語る潤様の言葉を止める
それ以上話させてしまっては何かあった場合、責任などとれないから…


「ありがとうございました」

「いいの?知ってる限りはまだ話せるけど…」

「ありがたいですが
これ以上は…責任を負えませんので…」

「…責任?なんで藍姫が責任とんの?
話してるのは俺の意思だよ?だから、全部自己責任」


当然でしょ?と首が傾げられる

潤様…お優しいところは健在ですね
そして貴方の前ではなぜか涙腺が緩んでしまう私も…


「え…ごめん、俺言っちゃいけないこと言った?」

「いえ…っ」

「…おいで藍姫」


両手を広げる潤様の胸に飛び込む

先程まで張っていた気が緩んで
頂点に立つ太夫が、めそめそ泣く智になってしまった

…ここの子達に示しがつきません

私は常に皆の手本となるよう振る舞わなければならない身ですのに…


どうしましょう

願わくばこのまま…ずっと…
寄り添っていたいと思ってしまう


私の心には昌宏さんがいるのに…

潤様…私は、どうしてしまったのでしょう…
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp