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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼









"奏月を、身請けしたい"





……は?


嘘だろ


聞き間違えだ



そう思ったけど
"奏月"と"身請け"は何度も聞こえてきた


眉間に皺が集まる感覚がする
俺今、あの男に向けてすげぇ怖い顔してると思う


「はぁ!!?億!?」


男の、叫びにも似た大きな声が館内に響いて
ふざけんなと番頭の胸ぐらが掴まれた


「ありゃ…これはやべぇのかな…」


できれば和也を狙うその男に近付きたくはないが…
そんなこと言ってられる状況でもないか
制止に近付こうとすると


「奏月は太夫です…」


番頭の落ち着いた声がして足を止めた

物怖じした様子もなく、真っ直ぐ見据えて言葉が続く


「藍姫や琥珀も億を超えております
2人に比べたら太夫になりたての奏月はまだ、低い方です
億提示は、妥当…どうかご理解ください」


納得しきってはいなかったけど、男が番頭から手を離した


「…近い内にまた来る
今度は現実味のある金額を提示してこい」


今回の代金をバンッと置いて、捨て台詞を吐きながら男が楼から出て行く

なんか…カッコよかったな番頭


「ふぁー…怖かったぁ…」


手汗やばいよーとズボンに手を擦りつけ…


前言撤回


てか何道草食ってんだ、早く和也んとこ行こ



「和也ー」

「翔様!」


にかっと笑われて俺もにかっと返した
襖を閉めて即、"大丈夫か?"と尋ねると笑顔をキープしたまま


「何のことでございましょう?」


可愛く言われて


「…いや、なんでもない
ピアノどうだ?前教えたやつ、あれ難しいだろ?」

「難しいです…でも絶対弾けるようにしてみせますもん!」

「出た、もん!」

「笑い事ではありませんー!」

「あははっやめろって!」


擽ってくる和也はいつも通り

身請けの話は和也自身には言ってないのか…

このままじゃやばい
俺がしっかり和也を守らなきゃ…
でも俺だって億を簡単に払うことはできない


何か…何か考えないと…
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