第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
弾かれたように、慧が振り返る
「健さんと太輔、どうかしたんですか…?」
「それはみんなが揃ってから話すよ
大丈夫。悪い話じゃないから」
「…じゃあ、僕と雅紀さんの事っていうのは?
改めて話す事なんてあったかな…」
慧が俺を想って慕ってくれている事は施設の皆が知っている事だ
俺がその想いに応えたいと思っている事も、きっと分かっているだろう
でもそれは暗黙の了解みたいなもので…立場上、公にする事はなかった
「それも皆の前で話すよ」
――― 健に言われたんだ
『次は雅紀さんと慧の番だよ』って ―――
そう言えば俺、気持ちを押さえ込んでばかりだった
和也の時も…結局言えなかった
いや、今となってはそれで正解だったのかなと思う
アイツは櫻井さんで良かったんだ
櫻井さんじゃなきゃダメだったんだ
それに…
「雅紀、さん…?」
「…あぁ、ごめん。
皆の所に戻ろうか」
「はい、」
櫻井さんに身請けされなかったら
俺は今でも和也への想いを捨てきれなかっただろう
だから感謝するよ
和也が櫻井さんと幸せになってくれた事
俺に…慧という心の拠り所の存在を知らしめてくれた事を