第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
『住み込みで店を手伝いたい…?』
『うん、』
『太輔も同じ意見なの?』
『っ、はい…!』
『マスターね、若い頃に苦労してあの店建てたんだ
10年前に奥さんに先立たれてからは一人で…
子供にね、恵まれなかったんだって。
跡継ぎも居ないからもう店を畳むしかないなって、すごく寂しそうに言うんだ
退院出来ても無理は出来ないし、また倒れるとも限らない
今回はたまたま僕達が発見したのが早かったから良かったけど…もしあのまま誰にも発見されなかったら、危なかったって…だからっ…!』
『健…』
『マスターのタマゴサンド、僕、作れるようになりたいんです…!
高校はちゃんと卒業します。だから…お願いしますっ…!』
『太輔も…わかった、わかったから』
見た目は強面の頑固そうなおじいさん
でも、健と太輔は凄く良い人だと言う
『遊艶楼の噂も知ってたよ
そこの子だって知っても…偏見なんて無かった
僕達の事を心のきれいな子だって言ってくれたんだ』
親に見放された健と家族を知らない太輔が
他人と一緒に暮らして大丈夫なのか、不安が無いと言ったら嘘になる
でも…
『改めて、御見舞を兼ねて話をしに行くよ
俺は二人の保護者だからね』
心配なだけじゃない
運営の手伝いや子供達の世話をしてくれる二人が居なくなるのは正直、痛手だ
でも真剣な二人の眼差しを見ていたら
駄目だとは言えなかった