第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
「…っ!」
「…慧。このまま聞いてくれる…?」
首元に顔を埋めると
ピクリと肩を揺らして、戸惑いがちに頷いた
「今日、和也達を此処に呼んだのは
みんなに報告したい事があるからって事は知ってるよね?」
「…っはい、」
「健と太輔の事。
それから…俺達の事も」
一ヶ月位前だったか
施設長室で書類の整理をしていると、知らない番号から電話がかかってきた
『はい。児童養護施設魅華月で…』
『雅紀さん!僕!健だけど!
大変なんだ!今すぐ来て!!』
『どうした?今何処に居るの?』
健は太輔を連れて街まで買い出しに行っているはずだった
告げられた場所は、施設を暫く下った所にある喫茶店の名前
店の前を通りかかった時、ドアが不自然に開いていて中を覗くと人が倒れていたらしい
俺はすぐさま店に向かい、床に寝かされた老人を抱えて、二人と共に病院に担ぎ込んだ
老人は事なきを得たが、そのまま入院となった
家族が居ないその人を見舞う為、健と太輔はほぼ毎日の様に病院へ足を運んでいた
『おじいさんがね、店を閉めようかと思ってるって言うんだ…
でもそれは不本意なんだと思うんだよね
だって、あの店は奥さんとの思い出の場所なんだから…
それでね、雅紀さん
お願いがあるんだけど…』