第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
松本さんの車でケーキ屋さんに向かう
運転は松本さん
助手席には、翔さん
僕と智さんは後部座席に座った
後ろからこうして見るとお二人はとても絵になる
タイプは違うけれど、お二方共華やかで格好良くて。
警戒心の強い翔さんが松本さんの前ではとても自然体に見えるのは、翔さんにとって彼が心の許せるご友人であるからこそなのだろう
「…だよな〜、和也?」
突然話を振られてハッと我に返る
「ふぇ?」
「なんだよ、聞いてなかったのか?」
「え、と… ごめんなさい、」
振り返り、口を尖らせてジトッと僕を見る翔さんに
まさかお二人を観察していましたとは言えずに目を泳がせる
「和也は翔くんに見惚れてたんだよね?」
「えっ?!」
「ルームミラーで見えてたからバレてるよ?」
「なんだ、そうか」
満足そうに前に向き直してくれてホッとすると
鏡越し、松本さんと目が合ってウインクをされて
あぁ、助け舟を出してくれたのだと悟った
「着いたよ」
午前中にも来た、お洒落な西洋菓子店の入り口前に車を停めた
「じゃあ取ってくるよ」
「翔くん、一緒に行くよ。
智と和也は此処で待ってて?」
お二人が車を降りると
車中はシンと静まり返る
そう言えば智さんはさっきからずっと黙ったままだ
「智さん、」
僕は堪らず声をかけた