第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
「智はさ、自分じゃ気付いてないかもしれないけど
モノヅクリが好きなんだと思うよ」
「そう、なのかな…」
「絵を描いたり何かを作ったりしてる時、凄くイイ顔してるんだよ?」
「ほんとに…?」
知らなかった。
確かに、絵を描くのも何かを作るのも子供の頃から好きだった
施設の先生は褒めてくれなかったけど
一人だけ、褒めてくれる人がいた
広告の裏に描いた鳥の絵を
褒めてくれた高校生のお兄さん
お兄さんの身体には幾つもの痣があった
小さかった僕を、暴力から守ってくれた
ご飯は抜きだと外に閉め出されたお兄さんに
こっそりおにぎりを握って持って行った時も
キレイな三角だねって褒めてくれた
『俺はもうすぐ高校を卒業する
そしたらここから出ていかなくちゃいけない
智
ここから逃げて
なるべく
なるべく遠くへ ―――――― 』
手にした一冊のスケッチブック
僕はそれを大事に抱き抱えて
ある日の夕方、施設という小さな鳥籠の中から飛び出した
健ちゃん
今なら、健ちゃんの言った言葉の意味がわかる気がするよ
慕う気持ちは恋心とは違う
僕を拾ってくれた昌宏さんに何の疑いもなく着いて行ったのは…昌宏さんの笑った顔が、お兄さんに似ていたからだ
慕っていたお兄さんの面影を
昌宏さんに重ねていたんだ