第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
❦ 翔Side ❦
「っだぁー! 坂道キッツ!」
「まだまだ先は長いですよ!
急がないと先に行ってしまいますよ、翔さん!」
「おいコラ、和也!
分かったから走んなって!」
ったく…筋肉量は女子並みだろうにどうしてこうも元気なのか
時折後ろを振り返っては笑顔で俺を手招く
その姿を尽々愛おしく感じるんだから、俺も相当やられてんな
「子供みたいだなぁ、和也は」
茶化して言えば
「こっ…子供じゃありませんもんっ…!」
途端にツンとすまし出すから面白い
「純真無垢で可愛い、って褒めてるんだけど?」
「僕が子供なら翔さんはおじさんですっ!」
「お兄さんな!」
俺に対して憎まれ口を叩ける様になった
そんな些細な事でさえも嬉しく感じるなんて
人ってこんなにも変わるもんなのか
「あっ…!」
「うん? どうした?」
「見てください、ほら!」
和也が指差したのは
林の中に射す、真っ直ぐな二本の光の柱
「綺麗ですね…」
「あぁ…綺麗だな」
和也と出会わなければ
こんな風に自然の美しさに気付く事さえ無かっただろう
「まるで僕達の事を歓迎してくださってるみたいです
ここまでおいで。って導かれてるみたい…」
「ゆっくり歩いておいで。だってさ?」
差し出した手に手を重ねて、ふわりと微笑むから
絡める様にしっかりと繋いで
光の道標に向かってゆっくりと歩き始めた