第9章 ❦ SPECIAL THANKS ❦ Vol.2
僕は男で、藍姫は源氏名で本名は智だと言った時、健ちゃんは目を丸くしてたっけ
『へぇ…。こんなに綺麗なら稼げるだろうね。
で? アンタはなんでここに居んの?』
健ちゃんは良い所のお坊っちゃまだった
物心付いた時から男の人が好きで、ずっとそれを隠していたけどある時親にそれがバレて“汚らわしい”と勘当され
街を徘徊している所を昌宏さんに拾われたと言っていた
『私は元々捨て子でした…
7つの時に施設を抜け出し、お腹が空いて道端で倒れている所を昌宏さんに拾われたんです』
『ふーん…そう。』
殆ど目を合わせてくれず、つっけんどんだった初見の時の印象とは違い
育った環境がまるで違うのに、日に日に僕達は打ち解けて行った
楼に一人二人と人が増えて行っても
健ちゃんは気付けば誰よりも側に居てくれた
僕の事を“さとちゃん”と呼ぶのは健ちゃんだけ
僕も普段は“琥珀”
二人きりの時は“健ちゃん”と呼び分けていた
“さとちゃん。幸せになんなきゃ僕が許さないからね!”
健ちゃん
約束…守れなくてごめんね
だけど今日は精一杯幸せを演じるから
どうか…
どうか、見抜かないで。