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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


ここにいる間は、会社設立に向けての話し合いが主

入ったビルの広い会議室には
こっちでのビジネスパートナーも参列していて
毎度こうしよう、ああしようと意見が飛び

俺は勉強になりそうなところを頭に入れたりメモしたり


過ぎていく日々は中々充実していた





でもその後には必ず会食もあった

帰って休みたいのに付き合いも学べと無理矢理連行されて


「あー…気持ち悪…」


なんでかたくさん飲まされた


滞在期間は後半分くらい

後少しの辛抱…


ふらつく足でなんとかホテルの自分の部屋まで帰ってきて、綺麗になってるベッドの上へ寝転がった


あれか、若いのは俺だけだから
面白がって毎回毎回…

夜のこれがなけりゃもっと充実した日々なのに…


「何日耐えれば………ん?」


カレンダーを確認しようとした時、外から音が聴こえた

おもむろに起き上がり窓を解放してみた

すると鍵盤を弾く聴き慣れた音が風と共に部屋の中に流れ込んできた


「かず…なり?」


そんなわけないよな、と苦笑してしまったけど
この感じ…思い出すな


空に浮かぶ月、暗い部屋、響くピアノ音


…なんだか安心する


渡したおもちゃのピアノ、弾いてくれてんのかな…

あの楽譜…和也ならすぐ弾けちゃうよな


これが終わったらまた持ってくから

それまでたくさんたくさん弾いて


他の男に抱かれてるとか
そんなん気にしないで
和也の心は俺のここにあんだから


弾いてるその瞬間だけは俺を思い出して
俺が教えたことを思い出して


もし泣いてしまったらその時も弾いて


支えにして



早く話したい

会いたい

和也を抱き締めたい…



窓の横の壁に背中をつけて
しばらく聴こえてくるその音に思いを馳せた


終わりを告げるよう音が止んでくると名残惜しくて…朝見てた楽譜に手を伸ばした


ついに聴こえなくなった音
けど窓は開けっぱで、床にしゃがみ込む

外からの明かりだけを頼りに楽譜へ目を通していけば自然と鼻歌が出て


「んーんん…」


それと一緒に、指が床を鍵盤代わりに叩いていく


目を瞑れば隣に和也がいるようだよ


帰ったらあの時みたいに笑って

好きだと言って


そしてたっぷり聴かせて…和也のピアノ…



後少し…もう少し
俺、頑張るから


和也…
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