第8章 ❦ SPECIAL THANKS ❦
有無を言わさなかった
父さんはいつだってそうだ
理想を押し付けるだけで俺の言い分なんか聞いちゃくれない
「…ずっと一緒に居るって約束したんです
だから…この話は破談にしてください、お願いします」
俺はもう一度、深く頭を下げた
「何処の娘だ?
最終学歴は?
親は何をしている?
大事な事だ
お前はその女と結婚したいのか」
「結婚は…出来ません、」
「どういう事だ、翔」
俺は、両親に恋人は男だと告げた
6年前、親友だった俺達はある日突然父さんによって引き離され
潤は大学を辞め、夢までも諦めた事
数ヶ月前に偶然再会した事
潤が俺を想っていてくれた事
俺自身も、潤を好きだと気付いた事
全てを話した
「ごめん。驚いたよね…」
「…そりゃ驚いたけど、でも… 私はあなたの味方よ、翔。
それだけは忘れないで…?」
「…ありがとう、母さん」
「それから…謝って済むことじゃないけど… 彼に…松本君に、本当に申し訳なかった、って…」
「…わかった。伝えとくよ。
じゃあ、俺行くね?
元気でね。父さんの事、宜しくね」
父さんに、二度と家の敷居を跨ぐなと言われた。所謂…勘当ってヤツだ
それでも俺の心の内は、スッキリとしていた
…帰ろう。潤の待つ家に。