第8章 ❦ SPECIAL THANKS ❦
「翔…」
翔の名前を呼んでみる
俺の大好きな人の名前…
「いつになったら帰ってくんだよ…
一人にするんじゃねぇよ…
約束が違うじゃねぇか、ずっと一緒に居ようなって言ったのはそっちだろ…」
本人の前じゃ決して言えない言葉を吐き出す自分自身が可笑しかった
「はぁ…何やってんだ俺は、」
未だメッセージは未読のまま
「仕事か… はたまた浮気か…」
“浮気”
胸がチクリと痛んで
そのヘビーな言葉を口にした事を後悔する
信じられないわけじゃない
でも…
心の何処かでやっぱり感じてしまうのは
この6年の間、ずっと翔だけを好きだった俺と
最近それに気付いたばかりの翔とじゃ
色々違うって事
年月が全てじゃない事はわかってるけど…
残りのワインを一気に飲み干すと
グラスと皿をキッチンに下げて
何の温もりも無い冷たいベッドに潜り込み
女々しいほどに翔の事ばかりを考えてしまう現実から逃げるように
頭からスッポリと布団を被って一人、身体を丸めて眠った
どうか夢なんて見ませんように ――――