第7章 Eternal Burgundy
「…じゃあ、またな」
ドアを閉めようとした俺に
「…翔!
コーヒーくらい…淹れるけど、」
背中越しに聞こえたのは
昨日俺が潤に言ったセリフそのまんま
「いいよ、悪いし…」
「…」
「…」
やっぱりギクシャクしてしまう
ダメだな、俺ら…
「…時間あるなら…寄ってけよ」
「えっ…、」
『翔、今日なんかあんの?』
『あー… 特別講義があるわ』
学食で少し遅めの昼飯を向かい合って食って
このあとどーする?って話していた
『講義って夕方からだろ?』
『そうだけど、潤だってバイトあんだろ?』
『俺は夕方に出りゃ間に合うの。
なんなら俺んち来ねぇ?』
『え?』
未だにハッキリ覚えてる
初めて潤の家に誘われた時の事
『時間あるなら寄ってけよ』
『…いいのか?』
『俺は別に構わないけど?』
それまで友達の家でなんて遊んだ事のなかった俺が
その日をキッカケになんだかんだ理由をつけて
親に嘘を吐いては潤のマンションに入り浸った
懐かしいな…
あの頃と同じ、誘い文句
「…いいのか?」
だから、俺も
あの頃と同じセリフで答える
「…俺は別に構わないけど、」
潤から返ってきた言葉もまた
あの頃と同じだった