第7章 Eternal Burgundy
❦ 翔Side ❦
『じゃあ…俺、行くわ』
前を見据えたままハンドルを握り直した潤がそう呟いて
『寄って行かないのか…?
コーヒーくらい淹れるけど、』
それを見て突発的に発せられたのは
潤を引き止めるような言葉だった
まさか部屋に誘われるなんて思ってもみなかったんだろう
潤のヤツ、凄く驚いた顔してる
俺だって自分にビックリだ
「…いや、いいよ」
「お礼くらいさせろよ」
「睡眠不足なんだから早く帰って寝ろ」
「まだ寝る時間じゃねーよ」
「…無理すんなよ、」
身体の無理をするなって事なのか
無理して誘うなって事なのか
「…わかった
今日はありがとな」
「おう」
走り去る潤の車を見送り、部屋に帰ると
今日一日あった事を思い出した
倒れた俺に駆け寄ってきた潤の姿
『翔!!』
俺の名前を呼ぶ声
向かい合って飯を食った事も
「あの頃はどれも当たり前にあったのにな…」
何時間も二人でいたのに
結局、聞きたい事の一つも聞けなかった
言いたい事も言えなかった
バックの中身を洗濯機に放り込む
「タオル…」
潤の香りがするタオルをギュッと握りしめた
やっぱりこのままじゃ、終われない。