第7章 Eternal Burgundy
おばちゃんは、うーん、と暫く考えたあと
翔の事を思い出したようだった
『いつも二人一緒だったわよね』
なんてそんな事を言われて、お互いどうしたら良いかわからなかった
「A定食、お待ちどう様〜」
「おわっ!懐かしい! いただきます!」
口いっぱいに頬張って幸せそうな顔をしてる
「やっぱ、美味ぇ!」
「そりゃよかった」
…この顔を見るのが好きだった
元々好きだった料理を本格的に覚えたのも…全部翔の為だった
「肉じゃがも激ウマだよ?」
「マジで…?」
「おばちゃん、肉じゃが追加ね!」
「あいよっ!」
もっと…大事な話をしなくちゃいけないのに
もう少しだけ…
あと少しだけ…
この時間を楽しみたい
そんな風に思う俺は罪なのかな
「「ごちそうさまでした」」
「お粗末様でした
またおいでね?」
「「はい」」
翔を送る為に車を走らせる
いつもはイラつく赤信号も
今日は真逆だ
「ここだよ」
高層マンションの前でハザードを点けて停まった
こんなトコに住めるくらい成功してんだ…良かった
「凄ぇトコ住んでんだな…」
「そんなことないよ…」
また、ギクシャクしてしまう
「仕事は…? 何してんの…?」
小山くんの仕事も聞いたことはなかった
スーツ着る仕事ってくらいしか知らない
「…二宮商事で商社マンしてる」
「マジ…?」
嬉しかった
勉強した甲斐あったじゃんか
目標、達成出来たんだな
「じゃあ…俺、行くわ」
「寄って行かないのか…?
コーヒーくらい淹れるけど、」
なんで
なんで
怖くないのかよ、俺の事が
部屋で俺と二人きりになっても
翔は平気なのかよ…