第7章 Eternal Burgundy
「…あれ…? 潤…? ここは…?」
2時間後、翔は目を覚ました
寝相の悪い翔がベッドの上でピクリとも動かなかったのは、死んだように深い眠りに落ちていたからだろう
「うちのジムの救護室だよ」
「あぁ、俺、あのまま…
ごめん、迷惑かけたな、」
「いいから。
起きたら水分摂れってさ。体起こせるか?」
「大丈…あっ、」
「バカ!ゆっくり起き上がれよ!危ねぇって!」
「ごめん、」
「だから、謝んなよ…」
顔が、近い。
翔の身体を俺が支えていて
その手の上に、翔の手が重なっていて
何だよコレ…
どちらからともなくパッと手を離した
「…家、帰れるか?」
「大丈夫」
そう言う割には、
「フラついてんぞ」
「大丈夫だっ!」
頑固なんだよ、翔は。
「睡眠不足だってさ。
栄養のあるモン食って、しっかり睡眠取れよ」
「俺、料理出来ねーもん」
「知ってるよ」
「…じゃあ、牛丼屋行く」
「人の話聞いてた?」
「コンビニで買う!」
「お前、保存料って知ってる?
その前に歩いて帰れんの?」
「じゃあどうしろっつーんだよ!
あー!A定食喰いてぇ!」
神様は意地悪だ
どうして俺と翔をまた引き合わせたんだ
「送ってくよ」
「いいよ、そんなん… 悪いし、」
「明日のニュースでお前の名前テロップに出てたら困るんだよ」
「道端で倒れて死ぬとかしねーし」
「腹減ってる上に体力消耗してるくせに?」
「…」
「A定食、食いたいんだろ?」
「まさか学食に潜り込むつもりなのか?」
「ちげーわ」
知った時は俺だってびっくりしたんだ
俺だけの秘密の店
そこに翔を連れて行く日が来るなんて思ってもみなかった
「いらっしゃーい!」
「おばちゃん、A定食二つね」
「あら、松本くん!今日はお連れさんがいるのねぇ
…? この方、どっかで…」
「おばちゃん、コイツも同じ大学だよ」
そう、
あの時の学食のおばちゃんの店に。