第7章 Eternal Burgundy
「…何やってんだよ」
「だってっ…」
「汗、凄いけど?」
ホラ、と
フロントに置いておいた翔のタオルを差し出した
「あ…この匂い…
潤が洗ってくれたんだ?」
「なんで分かるんだよ…」
「柔軟剤、変わってないから」
「そんな事いちいち覚えてんなよ…」
「全部覚えてるって言っただろ?」
何が言いたいんだよ、翔…
「この時間だと結構空いてるのな?
トレーニング、してっていいだろ?」
「お客様ですから?」
俺の返しにフッと笑うと
翔はフィッティングルームへと入っていった
今日は小山くんと一緒には来なかったんだな
別に…タオル如きで定時で上がってくる必要ないのにさ
今日は山口さんも休みだし
かと言って他の奴にコーチされんのも癪だし、俺が…
って
何言ってんだ、俺…
自動ドアの開く音がして
トレーニングウェアに身を包んだ翔が入ってきた
「あ…」
「潤もいちいち覚えてんじゃん」
翔が着てたのは、エンジ色の俺のTシャツとハーパン
うちに泊まった時にいつも貸してやっていた物だった
いつの間にか無くなってる事には気付いていた
あの日、お前が持って行ったのも
なんとなく察しがついてたよ
「なんで、それ…」
「好きなんだよ」
「好き…?」
「生地、イイじゃん? 触り心地抜群で気に入ってんだ
返さなきゃ…ダメか…?」
知ってるよ
お前がソレ、気に入ってた事
「5年も借りパクしといて今更かよ
…いいよ、翔にやるよ」
元々、翔の為に買ったんだからさ