第7章 Eternal Burgundy
もうすぐてっぺんを越えようとしてる
いくらなんでもこんな時間に電話って
たかだか、タオル忘れたくらいでさ…
PC管理されてる顧客名簿
その中に“櫻井 翔”の名前を見付ける
あ… 住所…
実家出たんだ
あの親が良く許したな…
つーか、翔
料理まるっきりダメじゃん
飯とかどうしてんの?
まさか買い飯と外食ばっか?
だから太るんじゃん
不摂生なんだよ、お前は…
登録されてる携帯番号をプッシュする
これはただの連絡事項だ
ただ、それだけだ
pu-ru-ru-ru-ru… pu-ru-ru-ru-ru…
5コール目が鳴り終えた時
『…もしもし、』
眠そうな翔の声が、受話器から俺の耳にダイレクトに入ってきた
「…夜分にすみません、」
『…潤?』
一発でわかるんだ、俺の声
つーかさ、名前を呼ばないでくれ
結構クるんだよ
「タオルのお忘れ物がありましたので…
フロントでお預かりしていますから、次回いらっしゃった時にお受け取りください」
『あ…タオル…
そっか、ありがとな
その為にわざわざ…?』
「…仕事だし、」
『ふはっ…そうだな
遅くまでご苦労様』
「…では、そういうことですので、」
『…待って!
明日…明日の夜は、潤は出勤してんの…?』
「してる、けど、」
『じゃあ明日取りに行くよ』
「…わかった」
『まさか潤が電話かけてきてくれるとは思わなかったよ。サンキューな』
「俺は別に…
じゃあ、」
『あぁ。また明日』
プツリと電話が切れて
俺は深呼吸をした
明日また、翔がうちのジムにやって来る