第7章 Eternal Burgundy
『言っとくけど、そのA定食は俺んだからな?』
『どっちだって一緒でしょ?
それとも今から交換します?
俺、手ぇ付けちゃいましたけど』
『するか、バカ!』
ムキになって答えると
ソイツはフッと柔らかく笑った
確かその日からだ
俺達の距離がグッと縮まったのは
学部は違うけど、同じ大学で同じ年
共通点はたったそれだけなのに
何故か翔とは気が合った
『二宮商事?!』
『あぁ』
『すっげーな、それ…』
俺でさえも知っている、大手の商社
そこに就職する事で、翔は初めて親父さんに認められるのだと知った
『潤は? 夢とかあんの?』
『俺? 俺は…』
誰かに自分の夢を語る事なんて無いと思っていた
自社ブランドの立ち上げなんて
そんな夢みたいな事
『すげーじゃん!俺、応援するよ!』
『ド素人が何言ってんだ、って思わねーの…?』
『そんなの思うわけないだろ!
潤ならやれるよ!
なぁ、試しに俺に似合いそうなの何かデザインしてよ?』
『そうだな…』
スケッチブックに即興でデザインを描いた
翔に似合いそうな…シルバーピアスを
『カッケー!マジ、カッケー!
でも、なんでピアス?』
『アクセサリーの贈り物にはそれぞれ意味があるんだよ』
『ふーん…』
数日後
翔の左耳にはピアスホールが空いていた
『バッカ! お前ナニやってんの?!
親父さんになんて言われるか…!』
『だって、潤がデザインしたあのピアス、俺に創ってくれるんだろ?
穴空いてなきゃ着けらんないじゃん?』
嬉しそうに答える翔を見つめながら
“抱きしめたい”
そう思う気持ちを必死に抑え込んでいた