第7章 Eternal Burgundy
「あーあ。
小山くん、大丈夫かい?
松本くんがスパルタだから、ごめんねぇ
ほら、肩貸すから捕まって?」
「や、俺連れて行きますし」
「いいから、いいから〜」
山口さんは不敵な笑みを浮かべて
小山くんを抱えてトイレへと向かった
残された俺と…翔
話すことなんて無い
今更話すことなんて、何も。
「潤」
沈黙を破ったのは翔の方だった
「…元気にしてたのか?」
翔の目を…直視する事ができない
「潤がジムのインストラクターやってるなんて驚きだよ
夢…諦めたのか…?」
夢…?
あぁ…
そんなのとっくに諦めた
悪魔に魂を売って
夢も希望も…あの日、全部手放したんだ
「よく覚えてんな、そんな昔のこと」
「覚えてるよ」
「ふーん…。 俺のことなんて記憶から抹消し…」
「全部覚えてる」
『全部覚えてる』
それはきっと、あの日の夜の事も含めて、だ
忘れたい過去じゃないのかよ
あんな風に俺に…男のプライドも何もズタズタにされて
…あぁ、そうか
これは憎しみだ
俺への憎しみの炎は
離れていたこの5年もの間
ずっと翔の中で絶えることなく燃え続けていたんだ
俺の事を嫌いになって
翔の方から拒絶してくれればいいと思った
本当にそうか…?
もしかしたら
俺自身が翔の想いの中に留まり続けたかったのかもしれない
例え
それが“愛”から“憎しみ”に変わったとしても