第7章 Eternal Burgundy
「大学の時の同級生ですよ」
山口さんに向けて
貼り付けたような笑顔で
翔はそう言い切った
同級生。
確かにそうだ
五年半前のあの日から
俺達の関係は“ただの大学の同級生”に変わったんだ
「なんだよ〜
じゃあ、櫻井さんの担当は松本君の方がいいかな?」
山口さん!何言い出すんだよ!
「「いや…」」
俺と翔の声がシンクロして
「いいの?
遠慮しなくていいのに」
それは余計なお節介だよ、山口さん
今更…
どの面下げて翔と会話すりゃいいんだよ
「僕は小山君の担当なんで
櫻井さんの担当は山口さん、お願いします」
軽く下げた頭を上げると
翔がわかり易く『ぷっ』と吹いた
なんだよ
そんなにおかしいかよ?
俺だって一応社会人だぞ?
敬語だって使えるし空気だって読めるようになったんだからな…?
に、しても
“櫻井さん”なんて呼び方
初めてしたよ
翔は山口さんに付いて
初心者向けのトレーニングから始めた
ランニングマシンの速度も遅めからのスタートだ
小山君のマシンから三台向こうのマシンで走る翔の息遣いが僅かに聞こえる
気にならない訳がない
嫌でも思い出してしまう
翔との…あの日の、たった一度きりの情事を
やべぇな、俺
仕事になんねぇや…