第7章 Eternal Burgundy
世の中の所謂“定時”と言われる時間を過ぎれば
闘いを終えた企業戦士達が吸い込まれるようにこのジムへとやってくる
メタボを気にしたサラリーマンや
体型維持に執念を燃やすOL
純粋に健康の為やダイエット目的で通ってる生徒さんはいいんだ
厄介なのは…
「松本センセ〜♡
この機械の操作の仕方教えてくれませんかぁ〜♡」
いや、俺、貴女の担当じゃないから。
それでも
「豊田さん。これはですね、ここのレバーをこう…」
笑顔で接客する。
三年も勤めてれば手慣れたもんだ
「やだぁ〜
重たぁ〜い♡
レバーが重たぁ〜い♡
も〜、どんだけぇ〜〜〜♡」
「はは…」
ただし、営業スマイルが若干引き攣ってしまうのは否めない
『あぁ!こんばんは!
早速来てくれたんですね!』
後ろの方で山口さんの声がして
『ちょっ…先輩!
どうかしたんですか?
櫻井先輩!』
小山くんの発したその名前に
条件反射のように思わず振り向いた
「は…?」
一瞬、時が止まったかと思った
なんで
なんでお前が此処に居るんだよ
「潤…」
俺を呼ぶ懐かしい声
その声は、確かにその人のモノだった
忘れもしない
忘れられる訳なんて…ないだろ…?
「翔…?」
「え? 二人、知り合いなの?」
「そーなんですか?」
山口さんと小山君が
不思議そうに俺と翔を交互に見つめた