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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


❦ 智(藍姫)side ❦


「…っつ…」


先程までお相手していた常連客
最中に手の出る方だった

そんなに激しいわけではないけど、今日初めて頬を叩かれた


「藍姫っ大丈夫!?」


部屋子から聞いたんだろう
心配した雅紀さんが部屋に飛び込んできた


「雅紀さんそんな慌てなくても…平気だよ…」

「何言ってんだよ!
ダメだよこんな…指の痕がはっきりついちゃってるじゃんか…」


そうなんだ…
通りで、頬が熱いわけだ


「放っておけばその内消えますから…」


急に黙った雅紀さんが、部屋を出ていこうと足を進ませていく


「…っ待ってください」


進む先が読めてしまって、その足を掴んだ


「…楼主に言わなきゃ」

「そんな決まり…ないでしょ」


暴力がいけないなんてルールはない


「俺は、我慢してきたんだよ」


…優しい雅紀さん

身体に小さくできてしまった痣を、着替え途中
目撃されてしまったことがあって

でも大丈夫だからあの方だけには言わないでって必死にお願いして…
それを忠実に守ってきてくれてた


「そういう客だって分かってて…番頭として通してきた
っでも…」

「常連客を怒らせたらここがどうなるか…分かってるはずです」

「…だって…藍姫だけこんな…」

「魅陰達のこと…和也のこと
雅紀さんはそんな事できませんよね…?」


ごめんなさい、雅紀さん
貴方の優しさに漬け込みます


権力や金を振るわれては私達に勝ち目はない

遊艶楼がなくなったらあの子達はまた孤独になるか
誰かに売られ、酷い仕打ちを受けるか

良い先なんて戸籍のない私達には想像できないのです


だったらここの方がマシ
身体は売ってるけど、食事も寝床もある

酷い客は私が引き受ければいいだけのこと


「…雅紀さん、何か冷やすものを持ってきてくれませんか…?」

「………分かったよ…」


納得しきっていない顔で部屋を出て、階段を下りていく足音が聞こえた


「…ありがとう」


私の発言に巻き込んでしまったあの子達は何も悪くないから…


浴室の鏡の前でじんじんと熱を上げる頬を、片手で覆った
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