第6章 ブラコンですが、何か?
「櫻葉センパイ、」
「んー?」
「…いや、何でも無いっス!」
あれから…
増田はいつも俺に何か言いたげで
結局何も言わなくて
「そうだ
俺、やっぱり山藤高行くことにしました」
「そっか…」
ウチの学校に入りたい、ずっとそう言ってきたのに
ここに来て増田は急に進路を変えた
理由は…聞かなくてもわかる
だけど、なんでお前がそこまでする必要あるんだよ?
「なぁ、増田」
「はい、」
「俺の為なら止めてくれよ?」
「何言ってんスか! 自分の為ですよ!
櫻葉センパイは無関係っス!」
「そうか…」
バスケの強豪校である山藤高は雅紀の志望校だ
増田は自分の為と言ってるけど
雅紀の事が関係してるのは火を見るよりも明らかだ
もう雅紀を守ってやれない俺に代わって、自分が…
きっとそんな風に思ってくれてるんだろう
「サンキューな…」
「え? 何スか?」
「カップラーメンくれって言ったんだよ!」
「カップラーメン一丁、喜んで!」
女を抱いてきた匂いを纏った俺を
深夜に突然訪ねて来る俺を
嫌な顔一つせずに笑顔で迎えてくれるお前に
心底救われてるんだぜ…?
なぁ、増田
雅紀じゃなくて
お前が本当の弟だったら良かったのにな、なんて一瞬思った俺は
どうかしてるのかな…