第6章 ブラコンですが、何か?
あの日、あの瞬間から。
雅紀は明らかに俺と距離を取るようになった
俺が人を殴るのがよっぽどショックだったのか
それとも、俺が怖いか…?
あんな人目に付く所で女と抱き合ってたのは
俺に対する無言の意思表示なんだろうと思う
だって…
その子を抱きしめる前
ずっと
ずっと
俺の事を見ていただろ…?
わざと俺に、見せ付けたんだよな…?
「そう言えば、櫻葉が半殺しにしたアイツ
ダンマリ決め込んでるらしいね?」
「余計なこと言えば自分がヤバイからでしょ?」
「腰巾着もですよ!
根性ねぇーんだよなー」
そう
奴等が口を割らないお陰で
俺は傷害の罪を問われることは無かった
「岡田さんにも感謝しろよ?」
剛さんのその言葉の意味は
きっと岡田先輩が裏で動いてくれていたんだろうと推測するに値した
俺には “翔は何も心配しなくていい” なんて言っといてさ
カッコ良すぎんだろ、岡田先輩…
「感謝してますよ
出逢った時からずっと…」
雅紀を守れる強い男になりたい
その一心で、俺はずっとやってきた
岡田先輩に教わった、実践的な喧嘩のやり方
今回、それが役に立ち過ぎた
アイツを半殺しにした事に後悔はしていない
ただ一つ
雅紀の目の前だって事も忘れて
自分をコントロール出来なかった自分自身に恐怖心を覚えた
雅紀の事になると見境が無くなる
だから、雅紀が俺の視界から外れていった事でほんの少し、
ほんの少しだけ…安堵したんだ