第6章 ブラコンですが、何か?
「無理言って付き合ってもらっちゃってごめんねっ…!」
涙を堪えて赤い目をした彼女が無理して笑っていて
「そんなこと…ないからっ…」
しょーくんもきっと僕に気付いてるはずだ
僕は
しょーくんに見せ付けるように
彼女の肩をグッと抱き寄せた
「雅紀く…!」
彼女を抱きしめたまま
しょーくんが僕達の横を通り過ぎるのを
ただただ、じっと待った
ゴメン
ゴメンね
僕は君の事、利用した…
彼女を送り届けて家に帰ると
先に帰っているはずのしょーくんの姿は見当たらなかった
しょーくんの部屋のドアの隙間からは
カバンと制服がベッドに投げ出されているのが見える
…出掛けたんだ
きっと、こんな僕の事、もう嫌いになっただろう
引き込まれるようにその部屋に入ると
何度も抱き合って眠ったベッドを掌で撫でた
「しょ、くんっ……」
なんで
なんで涙なんか出るの
自分でした事なのにこんなにも胸が苦しい
もう元には戻れない
いや、違う
元に戻るんだ
普通の兄と弟に
戻るだけだ
最後にもう一度だけ、と
未だしょーくんの温もりのある学ランを抱きしめた
好きだから
大好きだから
コイビトという肩書きに
さよなら、するんだ…