第6章 ブラコンですが、何か?
名ばかりの彼女と付き合い始めて三日目
この日、僕達の学校は一学期の中間試験を前に、部活動停止期間に入った
「雅紀くん、良かったら一緒に帰らない…?」
「えっ? でも僕、風ぽんと…」
「風間くんならもう帰ったみたいだよ?
さっき廊下走ってく姿見えたし…」
「えっ…そうなんだ、」
ここのところ、風ぽんに話しかけるとムスッとしていて
何か怒らせちゃったのかな?って
だから今日こそはちゃんと話したいって思ってたのに…先に帰っちゃったんだ
「雅紀くん…?」
「あっ… ゴメン、」
「無理ならいいの…! ごめんね、私、急に…」
「いいよ」
「えっ…?」
「一緒に帰ろうよ」
僕はまた
笑顔の仮面を貼り付けた
隣同士に並んで歩きながらも
一定の距離は崩さずに
女の子って…おしゃべりだな
そんなことを思いながら
『うん』とか『そうだね』とか
適当に相槌を打つ僕に、彼女も気付いたんだろう
不意に歩みを止めると
僕の学ランの裾をクン、と引っ張った
「何…?」
「雅紀くん、私の話全然聞いてくれてない」
「えっ…」
「やっぱり無理なのかな、私じゃ…」
涙混じりの声が尻すぼみになって行く
参ったな…
どう切り抜けようかと思考を巡らせていた時
俯いた彼女の肩越しに見えた人影に目が釘付けになった
間違いない
あれは… しょーくんだ。