第6章 ブラコンですが、何か?
…そこに居たのは僕の知っているしょーくんじゃなかった
心の無い人形の様な目
薄く笑った口元
人を…モノか何かのように
なんの感情もなく何度も殴り付ける
怖い、と思った
大好きなのに
怖いと思ってしまったんだ
僕がもっと強かったら…
あの時、せめて逃げる事だけでも出来たら…
しょーくんがこんな風に豹変する事は無かったのに
後悔の波が押し寄せて自責の念にかられる
僕の存在がある限り…
僕はしょーくんを犯罪者にしてしまう可能性だってあるんだ
「しょーくん! もう止めて!
その人、死んじゃう…!」
絞り出した僕の声に
機械的なしょーくんの動きがピタリと止まってホッと胸を撫で下ろした
「帰ろう、雅紀」
動かなくなった金髪の男から身体を離すと
血で汚れた拳を学ランで拭い
しょーくんはニコッと微笑って僕に手を差し出した
僕は…その手を握り返す事ができなかった
「雅紀」
「…」
一言も話さないまま
触れないまま
家に帰ると、しょーくんは無言で直ぐにバスルームへと消えて行った
自室に一人
ついさっきまで見ていた光景が映画のワンシーンのように蘇る
あの人は…どうなったんだろうか
まさか死んでないよね…?
しょーくんは警察に捕まるのかな…
僕の、せいで…
傍観していた僕も同罪か…
なんで僕は…あの時、しょーくんに言われるがまま
死角に隠れることしか出来なかったんだろう…