第6章 ブラコンですが、何か?
「何があったのかちゃんと聞かせてくんないか?」
「…」
「雅紀」
斜めに目を伏せていた雅紀の視線が俺の後ろに移って
振り返ると増田が小さく頷いた
「あのっ…あのね、」
冷静に聞いていたつもりだと思う
ここで怒りを露わにしたら
きっと雅紀は自責の念にかられてしまうから
「櫻葉センパイ、大丈夫っスか…?」
「しょーくん…?」
「あぁ。すっげームカついてるけど
雅紀は何も悪くないからな?
悪ぃのはソイツ等だ
…とにかく無事でよかった
増田。ありがとな」
「いえ
…あっ! 腹! 腹減ってませんか?
カップラーメンならありますよ!
俺、お湯沸かすのチョー得意っス!」
「バーカ。お湯沸かすくらい俺にだって出来るぜ?」
「料理はまるでダメだけどね?」
「あーっ!雅紀! お前、何気に俺の事ディスったろ?!」
「櫻葉センパイは料理の才能無し…っと♪
これ、今度のテストに出るかなー?」
「出るか、バカ!
つーか、メモんな!」
増田のお陰で、なんとか変な空気にならずに済んだ
俺に心配かけたとか
増田に迷惑かけたとか
雅紀はきっと思ってるだろうから…
この事はもうこれ以上、雅紀には聞けない
雅紀に手を出そうとした奴等の事は…後で増田にじっくり聞き出せばいい