第6章 ブラコンですが、何か?
「雅紀?! 雅紀なんだな?!」
『うんっ…』
「すっげぇ心配したんだぞ!
つーか、なんで増田と一緒なんだ?!」
俺は駅に向かって走っていた
増田の家に向かう為だ
電話で粗方のことは聞いていた
雅紀が押していたチャリを人にぶつけてしまった事
言いがかりをつけられた事
その現場をたまたま増田が目撃して助けてくれた事
雨に降られてズブ濡れだった雅紀を家に連れていってくれた事
だけど
なんか腑に落ちない
雅紀の声は僅かに震えていた
増田が何かしたとは思えない
言いがかりをつけてきた相手…
そいつに何を言われた…?
何か…されたのか…?
電話じゃ埒が明かないから
直接雅紀の口から聞こうと思った
「雅紀っ! 雅紀!居るか?!」
急いで向かった増田の家
インターホンを押すのも忘れて玄関のドアをガンガン叩く
「櫻葉センパイ、シーッ!
近所迷惑ですか…うわっ!」
「雅紀!」
「俺の話聞いてぇぇぇぇ…」
増田を押し退けて家の中に入ると
体育座りの雅紀が両手でマグカップを包んでいる姿が見えて
慌てて駆け寄る
「しょーくん!」
「雅紀、大丈夫か?!」
「うん、大丈夫…
増田さんがシャワー貸してくれて、服も…」
「じゃなくて!
怪我とか無いか?」
「怪我は無いよ、大丈夫」
「なんか…されなかったか…?」
俺の質問に雅紀の瞳が揺れて
あぁ、きっと何かあったんだって悟った