第6章 ブラコンですが、何か?
二人は顔を引き攣らせて
一瞬で僕から手を離した
「オイ、行くぞ…!」
「えっ?! ちょっ、ちょっと待てよ!」
慌てて逃げ出した二人に
手首を掴まれているもう一人が青ざめる
「離せって…!」
「離してください、ですよね? センパイ♪」
「は…離して、ください…」
「よく出来ました〜♪
じゃ、約束してね?
…二度とこんなマネすんじゃねぇぞ? 返事は?」
「…っ、はい…」
その人がパッと手を離すと
赤黒く変色した手首を庇いながら
最後の一人が尻尾を巻いて逃げて行った
「あ、あの…助けてくれてありがとうございましたっ…!」
「いいってことよ♪
はい、傘持って?」
自分の傘を僕に握らせて
その人は倒れた自転車を起こしてくれた
「怪我とかない?」
「はい…」
「それは良かった。
あー、でもびしょ濡れだね
俺も濡れちゃったけど」
「すみません…」
「いいからいいから。
俺チャリ押すからさ、君、傘さしててよ?
君のが背、高いし?」
「はい…」
「取り敢えず俺んちおいでよ
髪乾かさないと風邪引いちゃうよ?
ダイジョブ。俺、怪しいモンじゃないから!」
「怪しいだなんて、そんな…!」
「家、この近くなんだ
あっ。俺ね、増田貴久。ヨロシク!」
そう言って笑う増田君が
僕には天使に見えた