第6章 ブラコンですが、何か?
「気分は尾崎かぁ?」
村上さんがふははと笑いながら聞く
知らず知らずのうちに口ずさんでいたらしい
「歌ってええで! 合いの手入れたるわ!」
合いの手?!
15の夜に合いの手なんてあったかな?
「じゃあ、遠慮なく!」
国道を爆走しながら俺は熱唱した
「♪盗〜んだバイクで走り出す〜」
「俺のやし原付きやっちゅーねん!」
「♪行く〜先も わからぬまま〜」
「集会やっちゅーねん!」
「♪暗〜い夜の帳の 中へ〜」
「とばりってなんやっちゅーねん!」
「♪だ〜れにも縛られた〜くないと」
「ドMちゃうちゅーねん!」
「♪逃げ〜込んだ この〜夜に
自由になれた気がした 15の夜〜」
「俺は16やっちゅーねん!!」
なんだこれ、楽しいぞ(笑)
「着いたで」
連れてこられたのは、昭和感漂う一件の店
看板には『Johnny's』と書かれている
何屋だろう…?
村上さんがなんの躊躇もなく、貸し切り中の札のかかったドアを開けた
「あっ! 櫻葉センパイっ!」
俺の顔を見て駆け寄ってきたアイツの名前は確か…
「増田?」
「そーっス! 増田っス!」
増田の髪は、綺麗な黒色に染め直されていた