第6章 ブラコンですが、何か?
待ち合わせ場所の家の近くの公園で
コーヒーを啜りながら迎えが来るのを待った
健さんが来てくれんのかな?
それとも、剛さん?
「おっせーな」
空になった缶をゴミ箱に向かってポイッと投げると、華麗なロングシュートが決まった
よっしゃ!
心の中で小さくガッツポーズをする
向こうの方からバイクっぽいヘッドライトの光が近付いてくるのが見えて
迎えが来たのかも知れないと思った俺は、袋から特攻服を取り出してそれを羽織った
ん…?
譲り受けた時には気付かなかった、ある刺繍に目が留まる
「鴨川かごめ…?」
公園の入り口からバイク…ではなく原付きが入ってきて、俺の目の前で停まった
「櫻葉ってお前か?」
「そうですけど、」
「遅なって悪かったな? 俺は村上信五。
迎えに来たったで! はよ乗りぃ?」
ポンと投げられたハーフキャップをキャッチしてそれを被ると、荷台に跨がった
「よろしくお願いします」
「おう。兄ちゃん礼儀正しいな?
まぁそんな気ぃ使わんでもええで?
ほな出発しよか!」
村上さんの運転する原付きが勢い良く走り出した
流れて行く景色の煌めきと
体中に感じる風の心地よさの中
俺の脳内BGMには、尾崎豊の『15の夜』が流れていた