第6章 ブラコンですが、何か?
「また出掛けるの?」
「ごめんなぁ。どうしても行かなきゃなんなくて、」
「…そっか。気を付けてね?」
雅紀がキュッと唇を噛みしめた
唇…
しっとりと潤みを含んだ雅紀の唇から目が離せない
昨日の夜…あの唇にキスしちゃったんだよな…
柔らかくてプリプリだったなぁ…
思い出して思わずゴクリと唾を飲み込んだ
「しょーくん?」
「え? あっ、ごめん、俺行ってくるわ」
魅入ってしまっていた
イカン、イカン。
荷物を持って『じゃあ』と手を挙げると
「あっ…」
雅紀の手がふわっと宙を舞った
「しょーくん、それ…」
「ん? どれ?」
「…ううん、なんでもない
玄関の鍵閉めるから下まで送るね」
雅紀と二人で階段を降りる
「昨日、帰り遅かったよね。今日も遅いの?」
「ごめん、なるべく早く帰るか…」
「今日は待ってるから」
「えっ?」
「しょーくんが帰ってくるまで、ずっと待ってるから」
そんな、ヤキモチ妬きな彼女みたいなこと言われたらさ
抱きしめたくなるっての。
「いいから先寝とけよ?」
ポンポンと頭を撫でて、俺は家を後にした
雅紀の視線が
手にしていた荷物に…
特攻服が入っている袋に注がれている事に、気が付かないまま。