第4章 溺れる夜は…Monday
校門を出て
いつも雅紀と歩く道
今日は一人だ
雅紀の居ない右側がなんだかスースーして心地悪い
雅紀…
雅紀…
バイトの時や翔さんと会う時
じゃあね、と手を振って別れる交差点で
俺は立ち止まった
このまま駅に向かうべきか
辞めるべきか
暫くそこから動けずにいると
またスマホのバイブが鳴った
「もしもし」
「智くん? 今、ドコ?」
「駅の近くの交差点…」
「今日はいつもより遅いんだね?
もうすぐ着くからさ」
「あのっ…翔さん…!」
「どうした?」
「俺…」
言わなきゃ
「智くん?」
「翔さん、俺、もう…」
“翔さんとは会わない”
そう言おうとして
スマホをギュッと握りしめた
「取り敢えず、おいで?
話、しようか」
「うん…」
俺は最低だ
もう会わない、って言えなかった
翔さんに会ってしまえば
流れに任せて身体を委ねてしまうかもしれないのに
それなのに
なんで、俺は…
話をしようって言ってくれた
翔さんは一瞬で俺の変化を見抜いた
もしかしたら、気付いたんだろうか
俺がこのまま、翔さんから離れて行こうとしているのを…
駅に着くとコインロッカーの荷物を持って
着替えはせずに、そのままいつもの待ち合わせ場所へと向かった
制服姿で翔さんに会うのは初めてだ
いつもと違う感じに
なんだか少し、緊張する…