第4章 溺れる夜は…Monday
❦雅紀Side❦
あの後、駅からどうやって帰ってきたのか
なんの躊躇も無く白いポルシェに乗り込む智の姿が頭から離れずにいた
「智…」
智には敢えて言ってないけど
俺が最初に智の存在を知ったのは
高校に入学して直ぐの、合同レクリエーションの時
バスケのコートの隣り
体育館の中央に引かれたネットの向こう側で
バトミントンをしていたメンバーの中に、智は居た
華麗に決めたスマッシュに拍手が沸き起こったあと
照れくさそうに笑った智の顔が
凄く印象的だった
『ねぇ、アイツ名前なんてゆーの?』
『あぁ、大野の事?』
『ふうん…大野っていうんだ』
クラスも離れていて、専攻も違う俺達
校内で智の姿を見かける事の方が少なかったけど
偶然見かけた時は何故かやっぱり
気にして目で追ってしまう自分がいた
1年の終わりの数学の追試試験
その中に智の姿を見付けた時は心臓が止まるかと思った
初めて間近で智を見た
その横顔は本当に綺麗で
試験が終わったら今日こそ声を掛けてみよう
そう思ったんだ
友達になってからは
二人の距離がグンと縮まった
雷が苦手な理由を聞いた時
幼かった当時の智の気持ちを思うと
自然と涙が溢れた
2年の夏
智のお爺さんとお婆さんが亡くなった
葬儀の時、智は一度も涙を見せなかった
泣き方を忘れてしまったと
嘲笑って言う智が悲しかった