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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


「俺…変わりたいんだ」

「…それは…どういう」

「分かるだろ…?最低だった
今頃になって自分でも分かってきたんだ」


…いいことではあるけれど、いきなりだな


「でも変わるにはどうしたらいいのか分かんねぇんだ」

「私に…言われても…」

「…和也に戸籍がないって言われて…
潤に欲が全てじゃないって言われて…
どっちとも俺の知らない世界を教えてもらって
心ってやつが震えた気がしたんだ
だから…」

「その要領で…私からも話を聞けば
また変化があるだろうと?」

「…潤は何も話してくれなかったから…
自分でもちょっと考えたけど…結局分かんなくて、聞く為に…来た」


本気、なんだろうか…

じっと私を見つめる強い眼差しに耐えられなくて
スッと視線を逸らした


「…藍姫」


立ち上がって窓から見える街を見た

木々の隙間からではあるけど
たくさんの人々が歩いて、車も通っているのが分かる

でも…笑い合う表情から声を聞けることはなくて…


「櫻井様はここの者達を…なんとお考えですか…?
…欲望を満たす人形、そうお見えになりますか…?」

「え…」

「正直で構いません、大方はそうだと頷きます」

「…ごめん…欲の、捌け口としか…」

「…そうでしょう」


身体を重ねることに夢中になってしまった殿方達は
最初はよくても、次第に私達を人形のように扱うようになっていってしまう

愛だの、心だの
ここではそんな感情くだらないと…
人としての私達を殺していく


「…私達はあそこで歩いている方々と同じ…人間です
遊艶楼にいる者、全てに心があります」

「そうだよな…当然のことなのに
酷いこと…したよな、藍姫にも和也にも…」

「…私は慣れていますから…

でも…見世の子らは戸籍のない捨て子ばかり…
戸籍があっても売られた子だっているのです

みな悲しく、何かしらの痛みを持っています…

だから…優しく触れてあげてください」


振り返り、頭を下げると
立ち上がった櫻井様が私を抱き締めた


「藍姫もそうなんだろ…ごめんな」


本当に私が知っているお方なのか…
こんな急に優しくされてしまっては戸惑ってしまう


「優しくってどうすればいい…?」

「…今までのやり方をいきなり変えることは難しいでしょう…
初めはこうやって…抱き締めるのもいいかもしれませんね」
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