第4章 溺れる夜は…Monday
駅の外へと引き返した智が不意に立ち止まり
ジーンズのポケットからスマホを取り出して耳に当てた
誰かから電話がかかってきんだ…
ものの10秒程で電話を切ると、また歩きだし
タクシー乗り場の先で足を止め
柱に凭れ掛かった
智の様子をじっと見守る
きっとここで誰かを待ってるんだ
智の居る場所に人や車が向かう度、掌に嫌な汗をかいて
そこを通り過ぎたのを確認するとホッと胸を撫で下ろした
それから10分ほど経った頃だろうか
一台の車がロータリーに入ってきて
智の居る場所の方へと向かい、そこで停まった
真っ白なポルシェ
それに気付いた智は凭れていた柱から体を起こし
車へと数歩歩み寄る
助手席の窓をのぞき込んで
そして
「あっ…」
ポルシェの助手席のドアを開けて
当たり前のようにそれに乗り込んだ
俺はただ呆然とその光景を見ていることしか出来なかった
運転していた人が
男なのか、女なのか
幾つくらいの人なのかもわからない
智とはどういう関係?
二人でどこに行くの?
たまらずスマホを取り出し
智に電話をかけた
「お掛けになった電話番号は電波の届かない位置にあるか…」
クソッ!
さっき誰かと電話してたじゃないか
あの後電源を切ったんだ
何の為に…?
兎にも角にも、バイトだと言ったのは嘘だと確定した
もしかして、あのポルシェの人と会うために毎週嘘をついてたのか?
何が何でも確かめなきゃ…