第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
「僕を失うって…どうしてそう思うの?」
不思議そうに首を傾げる潤くんの隣りに寝そべり
髪を撫でた
好きな人に過去の恋愛の話をするのはちょっと気が引けたけど
潤くんが『ちゃんと知りたい』って言ってくれたから
情けないけど、
「『自分勝手なエッチをする』って理由でフラれた事が二度あってさ、」
もしかしたら他の子も
言わなかっただけで同じ風に思ってたのかもしれない
「何が自分勝手なのかわかんなくて
でもさっき、こんな風に独りよがりになる事だったのかなって、思って…
そしたら、このまま続けたら潤くんに嫌われて
サヨナラされちゃうんじゃないかって、思って…」
こんな話してどう思ったかなと
チラ、と潤くんの方に目をやると
あれ…また悲しい顔…
「あんまり聞きたくないけど…
違うと思うよ」
「えっ、違うの?」
「僕の身体のこと気遣ってくれてたし…
独りよがりなんて、全然そんな事ないよ…?」
じゃあ、なんで
なんで俺は今までフラれてきたんだ…?
「女の子の中にはさ…言わなくても悟って、って
自分が思ってる事に彼氏が気付いて当たり前って
そんな風に思う子も居て、」
あ…
『雅紀の鈍感! もういい!』
思い出した
そんな事も言われたな…
「でも悟り過ぎて、気付き過ぎて
相手中心になり過ぎちゃうと今度は
『優し過ぎる』とか『強引さが足りない』ってフラれちゃう
僕はそのパターンだったんだ」
優し過ぎてフラれるって意味わかんない!
「ああして欲しい、こうして欲しいって言わないで
彼氏が気付いてくれるのを期待して待ってて
その期待を裏切られれば雅紀さんみたいに『自分勝手』って言われちゃうし
気付き過ぎると僕みたいになっちゃうし…
僕はして欲しいことは言葉で伝えていくよ
だから
『自分勝手なエッチする』なんて言って雅紀さんを突き放したりしない」
俺だって
『優し過ぎる』なんて理由で潤くんを手放したりしない
だって俺は
優しい愛に包まれたくて
飴玉を買って、この世界に来たんだから…