第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂
「雅紀さん、明日仕事は?」
明日は仕事だけど
こっちで一日過ごして帰ったって
目が覚めたらまた家を出たあの時間に戻ってるんだろうし、
「っと…休み! 休みだよ!」
「そっか!
じゃあ泊まって行きますよね?」
「いいの?」
「もちろんです!
って、俺、仕事だった…」
『日曜出勤したんだし、明日休んじゃおっかな?』なんて言うから
それはダメって念を押した
「ハンコなら家でも押せるんだけどなぁ
あー、でも、会議…」
うーっ、と唸って下唇を出す潤くんが可愛くて
それ、拗ねてんの?
「じゃあ、今度また週末の夜に来たら泊めてくれる?」
「ホントに?! 今週の?!」
それって5日後でしょ
つまり、帰ってから5時間後…
仕事もあるしさすがにそれは無理だ
明日仕事が終わって飴玉屋に行けるのが夕方の6時頃
ってことは20時間後か
こっちで言うと…えーと……
「…再来週の土曜! 来月の9日の夜!」
「そんなに先…
それまで会えないんですか?」
「うん、ごめん…
でっ、でも! 明日潤くん仕事行ってる間に夕飯作っとくよ!
腕によりをかけて作るから!」
「それ嬉しい!!
楽しみにしてますね!」
あぁ、この笑顔…
守ってあげたくなる
こんなこと、初めてかも知れない
「あっ、じゃあ明日ランチも一緒にどうですか?!
ほら、あそこにビルが2つ見えるでしょ?」
大きな窓から煌めく街並みを見下ろした
「右がうちの会社のビルで
左がホテルなんです
会社の斜向かいなんですけどね、そこの最上階にある中華レストランのランチが美味くて」
ホテルのランチなんて高いんじゃないの…?
でもこんなに嬉しそうに話してくれてるんだし…
「うん、ランチ行こう!
俺、奢るよ!」
歳上らしくカッコよくキマったかな?
「ふふっ
そんな、一昨日のことなんて気にしなくていいのに
でも雅紀さんのその気持ちが嬉しいな
ありがとう、雅紀さん」
ふわりと微笑った潤くんを
思わず抱きしめそうになった
一旦落ち着いたはずの愚息が
また芯を持ち始める