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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第3章 飴玉本舗✡摩訶不思議堂


「はぁっ…はぁっ…! ごめんくださいっ…!」


気が付けば飴屋までの道程を走っていた
勢い良く店に駆け込むと
相変わらずの涼しい笑顔で伊勢貝さんが出迎えてくれる


「ようこそ、飴玉本舗✡摩訶不思議堂へ」

「飴っ…! 飴くださいっ!」


おれは財布の中から三万円を抜き取り
それを伊勢貝さんの手に握り込ませた


「かしこまりました」


白い手袋を嵌めて
前回同様、ショーケースから紫色に輝く飴玉を取り出す


「あのっ!」

「はい?」

「こんなにいろんな色があるのに
どうしていつも紫色なんですか?」


「さぁ…何故でしょうね?」


ニコリと笑った伊勢貝さんは
投げかけた疑問を含みのある言葉でサラリとかわした


「お手を」

「あっ、ちょ、ちょっと待ってください!
先に着替えさせてください!」


向こうは寒いんだって!
俺は持ってきたバッグから取り出したニットを着て、冬物のコートを羽織った
潤くんから借りていた服の入った袋を左手にしっかりと握る


「お願いします!」

「では、どうぞ」


差し出した掌の上に飴玉をポンと置かれると
フーッと息を整えて、俺はそれを口に含んだ




潤くんに会いたい!
潤くんに会いたい!
潤くんに会いたいっ!!




願い終えると共に、ものの数秒で口の中からシュワシュワと溶けて消えて行く飴玉
この後あの激しい頭痛が来れば
きっとまた潤くんに会え…


「うあ“ぁっ!」


来た
割れるような頭の痛み


「あ“ぁっ…! っ…!」


あまりの痛さにその場にしゃがみ込んだ


「行ってらっしゃいませ、相葉様」


だから…なんで俺の名前知ってるんだよ…
戻ってきたら聞いてみよう

視界がぼやけて見上げた伊勢貝さんの顔がグラリと歪んだ


「行って…来ます…」


無理矢理に口角を上げると
伊勢貝さんも微笑んだ

待っててね、潤くん
今からそっちに行くから
すぐに行くから…
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